これは私が子供の頃体験した実話だ。
正月に父親の実家に行った時のこと。
父方の祖父が笑いながら、とある人形をくれた。
それは、可愛らしい丸っこい白い身体を持ち、黒く丸いつぶらな目をしたアヒルの人形で、黄色のレインコートを着て、両手で黄色い傘を持っていた。見た目的に外国製っぽく、昔から家に置いてあったらしく少し年季が入っていた。
右足か左足か忘れてしまったが、足にボタンがあり、そこを押すと『雨に唄えば』という映画の「Singin’ in the Rain」を歌いながら、傘を何度も横に振る人形だった。
兄と私は当時、その映画の事も歌詞の内容も知らないが、何度もボタンを押して楽しんでいた。
ある日のこと。兄がこんなことを言い始めた。
この人形の足のボタンを押して歌わせると、3日後に雨が降る、と。
私はそんなことあるわけないやろ、と思って、その日、アヒルの人形の足を押した。
そして、三日後、雨が実際に降った。間の二日間は雨が降っていなかったので当時の私は驚いていた。
それから不定期ではあるものの、そのアヒルの人形のボタンを私と兄は何度か押した。すると、やはり三日後雨が降るのだ。
まあ、今考えれば偶然なのだろうが、当時の私たちは「呪いの人形や!」と二人で興奮していた。両親にも話していたが、何言うてんねんという感じで適当にあしらわれていた。まあ、偶然が本当何回も重なっており、もはや必然かのように感じられた訳なのだが。
確か、半年ぐらい経ったころだろうか、何度もボタンを押し続けていたせいか、
アヒルの傘を振る動きがぎこちなくなってきた。手を震わせながら、傘を振るアヒルは少し不気味だった。また、電池が切れたので、新しいのに替えたのだが、ぎこちない動きは変わらなかった。また、電池を替えた後はボタンを押しても三日後に雨は降らなくなったのだった。まあ、ただただ三日後に偶然雨が降っていたのだろうし、当たり前なのだが。
兄は効果がなくなったと落胆していた。
そのことからアヒルの人形から興味を失った私たちは記憶の隅に彼を追いやった。ボタンを押すこともなくなり、アヒルの人形はタンスかなんかに閉まっていた(どこに閉まったかまでは記憶が無い)。
中学生になった頃、家のおもちゃを一斉に処分しようとなったとき、おもちゃを整理している際、そのアヒルの人形を見つけた。兄も私も懐かしい呪いの人形やとなったのだが、ボタンを押しても、全く動かず、そのままゴミ袋に捨てたのだった。
もちろん、本当の呪いの人形でもないので、その後戻ってくることは無かったのだが、当時人形の効果に熱中していた私は、あの人形の顔、形、格好、傘を振る動きが約20年ほど経った今でも脳に焼き付いている。
「Singin’ in the Rain」の曲を聴く度に、毎回、思い出す程に。
記憶の中のアヒル人形
以前、同人誌を作った際に昔の記憶を思い起こして描いたアヒル人形のイラストです。何か心当たりのある方は連絡お願いします。この人形がどういったおもちゃだったのか知りたいので・・・

「Singin’ in the Rain」には何の罪もありません。私があの人形のカクカクした動きを思い出すだけで・・・映画自体も名作ですし・・・
